『帝国の慰安婦』無罪、慰安婦ハルモニ側と朴裕河教授のインタビュ-(京郷新聞2017年1月28日)

京郷新聞2017年1月28日(リンク)

『帝国の慰安婦』無罪、慰安婦ハルモニ側と朴裕河教授のインタビュ-

「判決にショックを受けた。『帝国の慰安婦』は悪意ある本」(慰安婦ハルモニ側のヤン・スンボン弁護士)

「名判決だ。私の本をきちんと読めば誤解は起こらないはず」(朴裕河世宗大教授)

 著書『帝国の慰安婦』で日本軍慰安婦被害者たちの名誉を毀損した疑いで裁判を起こされた朴裕河世宗大日本語日本文学科教授(60)が25日、一審で無罪を宣告された。ソウル東部地方裁判所(裁判長イ・サンユン部長判事)は、朴教授に対し、「学問の自由は憲法上保障された基本権であり、学術表現は正しいものだけでなく、間違ったものも保護しなければならない」と無罪を宣告した。

 イ・オクソンハルモニ(91)ら、慰安婦被害者11人は2013年8月に出版された『帝国の慰安婦』について、2014年6月、朴教授を、出版物による名誉毀損罪で告訴した。検察は、2015年11月、『帝国の慰安婦』において、日本軍慰安婦が「売春」であり、被害者は、日本帝国と「同志関係」にあったと表現したとして、名誉毀損の疑いで朴教授を起訴した。

 『帝国の慰安婦』には、さまざまな争点がある。慰安婦問題をめぐる歴史的記憶の闘争、外交問題、普遍的人権、そして学問と表現の自由…。このため、『帝国の慰安婦』は、これまで学界、法曹界、市民社会で熱い議論の的になっていた。

 この日の判決について、慰安婦被害者側のヤン・スンボン弁護士と朴教授の考えを聞いた。検察は26日、控訴した。

慰安婦ハルモニ側のヤン・スンボン弁護士、「裁判所が本を正しく理解していない」

-一審判決についてどう評価するか。

 「不当な判決だ。2015年2月に出版差し止めの仮処分申請が一部認められ、本の内容の一部が削除された。昨年1月には、本の内容がハルモニの人格権を侵害しているという理由で、民事訴訟で慰謝料の支払い命令が出た。民事訴訟のように、刑事訴訟でも同様の結果が出てくると思っていた。本をじっくり読み、どんな意図を持って書いたのかを考えれば、このような判決は出なかっただろう。裁判所が本を正しく理解しなかったようだ。裁判所は、朴教授が客観性を持って熱心に研究したと考えたようだが、でたらめだ。

-朴教授は、自分の本をきちんと読めば誤解は起こらないはずと言っている。

 「本を何度も読んだ。私も初めて読んだとき、「何の問題があるんだろう」と思った。本に「言い逃れ」の表現が多い。たとえば、「同志的関係」とか「自発的売春婦」という表現をしても、「日本に責任がないわけではない」という表現をつけておく。本の内容が行ったり来たりして、最初は何を言っているのか正確にはつかめなかった。しかし、何度も読めば、客観的な研究といえないことがわかる。朴教授は慰安婦の被害を日本の「戦争犯罪」と見ていない。朴教授は慰安婦問題が貧しい社会、男性中心の社会、国家中心の社会では、いつでも存在しているのだから、日本の戦争犯罪は、特別なケースではないと見ている」

-朴教授の主張のどこがいちばん問題か。

 「慰安婦は、日本に「法的責任」を問うことのできない「自発的売春」というふうに言いくるめている。日本政府の論理と同じだ。朴教授は、「賠償」ではなく「補償」を主張している。日本帝国と慰安婦は「同志的関係」にあり、日本の軍人のように、慰安婦たちも国(日本帝国)により犠牲になったので、補償してやろうという立場だ。非常に悪意がある。ところが、裁判所は、朴教授が慰安婦問題を解決するために、善意を持っていると見ていることにショックを受けた。実は私は裁判所が無罪を宣告するとしても叱責しつつのものだろうと思っていた。ところが擁護するので、大きなショックを受けた」

-学問的な批判の領域であって、刑事罰の対象ではないという反論も強い。

 「当然、表現の自由は重要だ。しかし、刑法の表現の自由と相容れない個人の人格権と名誉権もある。表現の自由も、無制限の自由ではなく、限界がある。朴教授の表現がその限界を超えたかどうかが問題だ。限界を超えて、ハルモニの人格権を毀損した。私は朴教授が表現の自由を十分に享受していると思う」

-今後、どのような予定か。

 「民事裁判では、事実摘示による名誉毀損が認められたが、刑事裁判では違う見方がされた。私がいちばん驚いたのは、問題の表現35個所のうち30個所を単なる意見表明と見なしたことだ。十分に客観的な証拠から引き出せる事実摘示なのに意見表明と判断されびっくりした。民事裁判の結果と、あまりにもかけ離れた判断なので、控訴審では、この点をもう一度冷静に争わなければならない」

-被害者のハルモニたちの反応はどうか。

 「ハルモニたちはひどくショックを受けている。怒り、不満がさめられない様子だ。民事訴訟ではなく、刑事訴訟なので、検察と被告の戦いであり、われわれがとりうる行動は意見書を提出することくらいだ。反論の資料を集めて意見書を出すつもりだ。朴教授は、慰安婦が日本政府の戦争犯罪被害者だと考えていないが、私は見方が違う。日本軍慰安婦は日本政府の戦争犯罪だ。これを否定する『帝国の慰安婦』の意図は本当に悪いと思う」

朴裕河世宗大日本語日本文学科朴裕河教授、「本をきちんと読めば何の問題もないはず」

-判決についてどう評価するか。

 「名判決だった。裁判所が正義をもって勇気ある判決を下した。本の一節を一つ一つ取り上げていた、合理的に判断すれば、何も問題がないと思う。民事裁判で下された慰謝料支払い命令も、中止を申請し認められた。刑事裁判で、十分に無罪を得られると思っていた。最近の「崔順実ゲート」は、韓国社会のさまざまな問題が明るみに出され、正されていく過程であり、今回の判決もそうした過程の一環として受けとめたい。今後も、葛藤を分析し、代案を提示することにより、韓半島と東アジアの平和に貢献したいと思う。今回の判決は、韓国社会の重要な転換点だと思う」

- 『帝国の慰安婦』を書いた目的は何か。

 「戦争犯罪としてのみ見られていた慰安婦問題の原因を、帝国主義に見出した本だ。慰安婦は、国家が強要した売春であり、強要した愛国だった。本を読んで慰安婦被害者たちの悲しみを正しく知ることになり、謝罪の心を持つようになったという日本人が多かった。韓日関係の場合、支配者だった日本に大きな責任があるのは明らかだが、すべての関係は、自分自身を振り返る自省的な態度がなければ、常に平行線を辿るほかない。主に日本帝国の責任を問い、植民地朝鮮の問題についても少し言及しただけなのに、とんでもなく歪められ、あまりにも多くの誤解や非難を受けた。私は被害者のハルモニたちの抑圧された声を代弁しただけだ」

-裁判の過程についてどう思うか。

 「私を非難する声と力があまりにも大きかった。慰安婦支援団体は、自分たちの考えを国民の常識として作り上げてきた。私が戦った相手は、被害者のハルモニではなく、私の本を自分の見方で読み、伝えた人々だったということを、最も強く言いたい。証拠も裁判所に提出した。裁判を経験し、慰安婦問題についてさらに勉強し、本に書いたことにいっそう強い確信を持つようになった。私を批判する人々に、公開討論会を何度も要請したが、応答がない」

-慰安婦被害者のハルモニたちが裁判の結果について怒っている。

 「私を刑事告訴した被害者のハルモニは11人で、その中の2人だけが裁判所にもいらっしゃった。ところが支援団体は、すべての被害者ハルモニが私を非難しているかのように歪曲している。しかし、ハルモニの中には、私の意見と同じように考えている方もおられた。告訴したハルモニも、私の主張を正確にお知りになったら誤解が解けると思う。昨年12月20日の結審公判で行った最終陳述も、ハルモニたちに聞かせようという思いで書いた。しかし、支援団体がハルモニを連れて出ていってしまったので、最終陳述を聞かせることができなかった」

-裁判所が無罪の根拠として「学問と表現の自由」の領域であることを挙げた。

 「マスコミの報道を見ると「間違った表現であっても許されなければならない」という趣旨のようだ。しかし、私は依然として間違った内容があるとは思っていない。問題になった「自発的売春」という表現は、慰安婦強制動員否定論者がそのように言ったことを批判した文脈で出てくる。私は一度も「表現の自由」という理屈で本を擁護したことはない。心を開き、きちんと読めば何の問題もない本だ。問題を正しく見てこそ、責任もきちんと問うことができ、謝罪もしてもらえる」

-慰安婦問題について、また本を出すつもりか。

 「歴史的事実について『帝国の慰安婦』に書かなかったことを書くべきだと思っている。平和を志向しているかのように見える韓日知識人の考え方が、なぜ不和と暴力を呼んでしまうのか考えたい。冷戦後の韓日の不和は続き、私をとんでもない暴力で追いつめた。すでに書き始めており、できるだけ早く出せればと思う。おそらく書名は「暴力の構造」もしくは「歴史への向き合う方」になるだろう」

翻訳: Hiroshi Hatta
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